『ホテル・ハイビスカス』は、沖縄のアットホームなホテルが舞台の物語。おてんばな女の子みえことその家族の、ほのぼのした一家が運営するホテルです。
“南国気質”の大らかな登場人物たちを見ていると、沖縄に行きたい! 暮らしてみたい! という気持ちになります。
マンガの連載がスタートしたのは、20年前。当時と比べて今では沖縄や沖縄文化が広く受け入れられるようになったことがうれしいと、仲宗根先生は語ります。
ベリー●ホテル・ハイビスカスの物語は、ご自身の体験がもとになっているのですか?
仲宗根先生●よく「自伝でしょ」って言われるんですけど、本当は、全部のキャラクターに、自分以外のモデルがいるんです。主人公のみえこは、小学校の頃に転校先の学校にいた男勝りの女の子。実際には名前も違います。転校したばかりの私に声をかけてくれたし、すごく助けられたんです。そして、家に遊びに行くと、ハンサムなハーフのお兄ちゃんがいたんです! 当時の沖縄では、クラスにハーフの子もたくさんいたし、兄弟でお父さんが違ったり、ちょっと複雑な家庭も多かったですね。
ベリー●まさに主人公みえこの家庭環境ですね。沖縄が舞台の作品は、ずっと描きたいと思われていたんですか?
仲宗根先生●最初はギャグマンガを描いて賞をもらったのですが、その後持ち込みしても反応がなくて、最後にいちばん描きたくない沖縄の漫画を描こうと思ったんです。そのマンガが講談社のコミックオープン大賞を取りました。審査員のちばてつや先生に「この作者は、最後と思って描いたに違いない」と言われ、見抜かれている! 逃げられないと思いましたね。私はゴールにしたかったのに、そこがスタートになったんです。
ベリー●沖縄のことを描きたくなかった理由はなんですか?
仲宗根先生●今でこそ、テレビに沖縄出身のタレントがたくさん出てきたり、沖縄が舞台の映画やドラマもありますが、当時は、沖縄について正しく理解されていないところがあったんです。沖縄料理のことを話しても誰も知らないし、「ハダシで生活してるんでしょ?」って言われることもありました。沖縄出身であることにすごくコンプレックスがあったんですね。それから、沖縄といえば戦争で被害があった県って言われるなど、部分的なイメージでしか見てもらえなかったんです。
実際に私が知っている沖縄の人たちは、南国気質というか、ものすごく明るくて、そのあたり、本土の人たちとのギャップを埋めたいと思って描くことにしました。沖縄の言葉に「てーげー」ってあるんです。「いい加減」というか「良い加減」ですね。「なんくるないーさー」(どうにかなるでしょう)とか、そんな大らかなところを描きたかったですね。
ベリー●作品中には沖縄方言が出てきますが、かなり意識して描かれたのですか?
仲宗根先生●キャラクターにはモデルがいるし、作品の内容にも、すべてもとになった話があるんです。リアリティのある話なので、キャラクターが自然にしゃべり始めた言葉が沖縄方言でしたね。特に意識はしてないですし、修正しようとしてもキャラクターに拒否されるんですよ。
マンガの中で、おばあの言葉はほとんど方言ですが、みえこたちの言葉には部分的にしか方言が入りません。地域によって違いますが、私の育った那覇ではそのような方言の使い方をしていて、「ブロークン方言」と私は呼んでいます。
ベリー●最近では、沖縄に移住したり、沖縄にあこがれる人が増えていますね。
仲宗根先生●うれしいですね。“うちなんちゅすばらしい”って思います。南国の気候とか、太陽とかのおかげなのか、沖縄には理屈じゃ言えない人の良さがあるんです。
東京に来てびっくりしたのは、本音と建て前があることなんです。「遊びに来て」って言われて本当に行ったら、迷惑な顔をされたことがあって。沖縄なら「来て」って言ったら本当に来て欲しいってことで、家が散らかっていてもあるがままを見せるんですけどね。私自身、そんな“うちなんちゅ流”を続けたいと思っています。
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仲宗根みいこ(なかそね・みいこ)
沖縄県那覇市出身。高校卒業後に上京。1986年に『ホテル・ハイビスカス』で講談社コミックオープン大賞を受賞。
旦那さんは青森出身。青森では自分のことを「わ」と言い、沖縄では男の子が自分のことを「わん」というなど、意外な方言の共通点を見つけることもあるとのこと。
イラストの「ムーチー」は「鬼餅」のこと。旧暦の12月3日には、ムーチーのとぎ汁で鬼を追い払います。

『新装版 ホテル・ハイビスカス』 (新潮社刊)
ホテル・ハイビスカスを運営するのは、おてんばな女の子みえこ、ハーフのお兄ちゃんとお姉ちゃん、お父さん、お母さん、おばあ。客室は1室しかないけど、アットホームでインターナショナルなホテルです。ほのぼのした気持ちで読み進めながら、ホロリとさせられるシーンも。沖縄の文化や風習、言葉についても知ることができます。2002年には、中江裕司監督の手により、映画化されました。


みえこはいつも元気いっぱい。友だちと騒ぎながらかけ回っています。おばあの言葉は、まるまる沖縄の方言です。
(c)仲宗根みいこ 新潮社
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