方言大学 ここは講師をお招きして方言を解説してもらう専門チャンネル。
ちょっと堅い、けれど、ためになる講座を中心にお送りします。
公開講座「方言みーつけたー生活の中の方言を探るー」


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第三回:「ひく」と「しく」 〜ふとんは「ひく」か「しく」か?

●関西人の多くは、「敷き布団」は「しきぶとん」、「敷き布」は「しきふ」と正しく読めるのに、なぜか「ふとんをヒク(敷く)」と発音します。この種の例は、ヒチヤ(質屋)、ヒチメンチョウ(七面鳥)、ヒツコイ(しつこい)などと、挙げるのに苦労しません。
逆に、東京人(旧江戸っ子)は「ヒ」の音が苦手なようで、シノマル(日の丸)、シトチガイ(人違い)、シロコ(弘子)などといまだに発音している人もいます。

●しかし、最近では、関西人も若い層を中心に「ふとんをシク」に変わりつつあるようで、ここには共通語化の流れを見ることができます。
逆に、東京の下町の小学生対象の古い調査(昭和24年)で、「シト(人)」が約55%、「オシサマ」(お日様)が約42%と高いのは当然としても、「ヒチゴサン」が約35%もあったというのは驚きです。「ヒチゴサン」の例は、ヒがシとなまるから気をつけなければという意識が強すぎたために、逆にシをヒに直してしまった、いわば「直し過ぎ現象」と言われています。

●ふとんは「ひく」か「しく」か、あなたの地方では、どちらを使ってますか?
今回はかなり複雑な分布が見られるのではと楽しみにしています。







先生のみつけた


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  ●予想外の調査結果に正直、とまどっています。「ふとんを敷く」と表記するのだから、当然大部分の地方の人が「シク」と発音し、ヒがシと訛る傾向にある関西地方と「直し過ぎ現象」が顕著な東京地方のみが「ヒク」と発音すると予想していたのですが、全国の60%以上の人が「ヒク」と発音するなんて、本当に驚きです。

●「敷布団(しきぶとん)だから『シク』でしょう」(長野県)、「布団はひく、女房は亭主を尻にひく」(大阪府)、「自分でもときどきどっちなのか迷ってしまう」(福井県)などといった回答が地方を限定せずに入り乱れる調査結果から、「布団をシクかヒクか? には東西差が見られる」という看板は、ひとまず下ろさねばと思っています。興味深い調査結果を寄せていただいた皆様に感謝いたします。
 




先生紹介
黒崎良昭 - くろさきよしあき
 園田学園女子大学 国際文化学部、助教授。「日本語学」「方言学」を専攻し、
日本語のコミュニケーションの諸相などを研究。
『全国お国ことば辞典』(三省堂)など方言に関係した書籍に多数、関わる。

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